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既払金の扱いについて

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既払金の扱いについて

既払金の扱いについて

2025/12/20

1 はじめに

交通事故の被害に遭われた方が、交通事故の加害者の方と示談交渉を行う際、既に支払われた金額についての処理が問題になることがあります。

例えば、典型的なのは治療費です。

治療費は、相手方の保険会社と過失割合の認識に大きな開きが無い限りは、保険会社が病院に直接支払いを行っていると思います。

これは、後から既払金として差し引かれます。

その他にも、休業損害が内払いされているようなケースもあります。

では、これら既払金については、そのまま全て差し引きされるべきなのでしょうか。

 

2 費目拘束

これらの既払金を差し引くかどうかは、法律的には、損益相殺の対象になるかという形で表現されます。

実際には、費目拘束があるかどうかという点が重要になります。

例えば、労災にも該当するような交通事故の場合に、労災から休業補償給付を受給したものについて、慰謝料からも差し引きを認めるかといいった形で問題となります。

特に、過失相殺が問題となる事故の場合には重要です。

単純化すると、事故により以下の損害が発生したとします。

過失割合は3対7で、こちらが3割引かれるとします。

 

治療費   10万円

休業損害  20万円

慰謝料   70万円

過失割合  30万円▲

損害額   70万円

 

では、労災から受け取った休業損害が20万円あったとします。

この場合に、損害費目に拘束が無く、損害から全部差し引きができるという処理をした場合、

70万円―20万円=50万円が請求額になります(※ 細かな話をすると、過失相殺の後に労災を差し引くのか、労災を差し引きしてから過失相殺をするのかという問題もあるのですが、判例は前者のため、そのような前提で記載しています)。

 

では、労災から受け取った休業損害は、20万円からしか差し引きができないとします。

その場合、過失3割が控除されるとすると、

治療費  10万円×0.7=7万円

休業損害 20万円×0.7=14万円

慰謝料  70万円×0.7=49万円

 

ここから、休業損害に20万円を充てるとすると、―6万円=0円となります。

残りの治療費7万円+慰謝料49万円=56万円が請求額となります。

 

以上のように、損益相殺の対象となる既払金について、費目拘束があるかどうかは、損害の計算に当たって、非常に重要な意味を持ちます。

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